マラッカ川上のTan Kim Seng橋での半日 — ユネスコ世界遺産都市の「小さなベネチア」を歩いてみた
マレーシアのマラッカ(Melaka)旧市街地はユネスコ世界文化遺産に指定されている。ペナンのジョージタウンと共に「マラッカ海峡の歴史都市」として登録されたが、実際に歩いてみるとなぜそうなったのかが身をもって理解できる。都市の中央をマラッカ川が流れ、その両岸には低いショップハウスと商店が軒を連ねている。ベネチアというのは大げさだが、水路を中心に両岸が向かい合っ…
メラカ · Jambatan Tan Kim Seng
マレーシアのマラッカ(Melaka)旧市街地はユネスコ世界文化遺産に指定されている。ペナンのジョージタウンと共に「マラッカ海峡の歴史都市」として登録されたが、実際に歩いてみるとなぜそうなったのかが身をもって理解できる。都市の中央をマラッカ川が流れ、その両岸には低いショップハウスと商店が軒を連ねている。ベネチアというのは大げさだが、水路を中心に両岸が向かい合って商売をする構造は確かに似ている。私が長くいた場所はJambatan Tan Kim Seng、川に架かった橋だ。ここの欄干に腕をもたせかけると、川の両側が一目で入ってくる。

写真に見えるように、水色はコーヒーに牛乳を入れたような色だ。初めて来た人が「なぜこんなに濁っているのか」と言うのだが、この川は海とつながっているため潮流の影響を受ける。私が行った日は水が大きく引いていたので、両側の石壁の下には泥地と牡蠣の殻が付いた石がそのままむき出しになっていた。においも少し立ってくる。泥地特有の磯くさい臭いなのだが、耐えられるレベルだが、写真で想像した「ロマンチックな水路」とは異なるということは事前に知って行くと良い。

川の水を眺めていて出会ったもの — トカゲ
橋の欄干から長い間川を眺めていると、水の流れの間を何か細長いものが泳いでいった。最初は木の枝かと思ったが、尻尾を左右に振りながら進んでいくのは明らかだった。オオトカゲ(モニターリザード)だ。川辺の商店の看板のすぐ下、人々の足元数メートルのポイントを何事もなく通り過ぎた。カフェやお土産屋が立ち並ぶ観光地の真っ只中なのに、この川はまだ野生が生きている水路なんだということが実感できた。川のそばを歩く時は、水辺の方に足を出さないのが良い。

日傘なしでは持ちこたえられない — そしてこの暑さでコスチュームを着た人
正直に言うと、この地域で一番大事な準備物は地図でもお金でもなく日傘だ。昼間、日差しがない広場を横切ると、頭頂部が痛くなる。湿度も高いので、10分歩くだけでシャツが背中に張りつく。地元の人々は男女を問わず傘を日傘として使っている。下の噴水の写真にも、黒い傘を差している人がそのまま写っている。観光客だと思われたくないからと我慢せず、ただ傘を一本持って行く方が良い。私は初日にこれを持って行かなかったため、午後に頭痛がしてカフェに逃げ込んだ。

ところが、この暑さの中で全身コスチュームを着て立っている人もいた。噴水の横の花壇の前、ピンク色の毛並みキャラクターコスチューム。最近流行しているキャラクター姿なのだが、頭から足の先まで全て覆う服だ。体感35度以上の昼間にそれを着て立ち、子ども達と写真を撮ってあげていた。通り過ぎた女の子が手を引っ張りながらそちらに行こうとし、大人たちはその前で日傘を差しながら様子を見ている。見ていると冷たいコーヒーをご馳走してあげたくなった。写真撮影後にチップを渡すのが慣例なので、撮ったのであれば数リンギの紙幣を渡すのが正しい。

橋を渡った先の赤い広場 — オランダ広場周辺
Tan Kim Seng橋から川を渡ってほんの少し歩くと、すぐに赤い建物の群れが現れる。マラッカ観光写真に最も頻繁に登場するクライスト・チャーチ・マラッカ(Christ Church Melaka)だ。正面の妻壁に'CHRIST CHURCH MELAKA 1753'と刻まれており、その左側には'AD 1931'の表記があるマラッカ美術館(Balai Senilukis Melaka)が隣接している。18世紀のオランダ時代の教会と20世紀の建物が同じ赤色で塗られ、一つのかたまりのように見える。
教会の前の広場には、トライショー(自転車人力車)が列をなして待機している。ハローキティ、ミニオンズといったキャラクターの飾りと調和しており、夜はLEDまで灯る。好みは分かれるところだが、私は初めて見たときは少し戸惑った。ユネスコ世界遺産都市の18世紀の教会の前に、蛍光ピンクのキティ人力車が立っている組み合わせだからだ。それでも、これが今のマラッカの実際の姿だ。

同じ広場に赤い時計塔も立っている。塔の隣の回廊に'STADTHUYS'と大きく書かれているので、場所を見つけやすい。時計塔そのものは数分で全部見ることができるが、ここがまさに旧市街を歩く際の基準点だ。ここから川の方に下りて行けば橋、反対に丘を登ればセント・ポール教会方向だ。

川辺の路地の壁画、そして船に乗る場所
川の西側の路地に入ると、赤く塗られたショップハウスの壁に大きな壁画がある。マレー伝統衣装を着た二人の人物が格闘している場面で、横には "...bijak Laksana Tuah / ...berani Laksana Jebat" という文言が書かれている。マレー古典の物語のハン・トゥアとハン・ジェバットを指す文言だ。壁が割れてその中が見えるように描いたトロンプ・ロイユ技法なので、実際に見るとかなりの立体感がある。路地の上には電球の列が掛かっており、赤いひさしが張り出しているので、正面から撮影しようとするとひさしの影を避けて数歩下がる必要がある。

川の向こう側には川下りクルーズの船乗り場である'JETI STADTHUYS'がある。濃いピンク色の看板に Selamat Datang(いらっしゃいませ)と書かれており、ソーラーパネルが付いた青い屋根の下にステンレス製のベンチが置かれている。日よけが浅いので、待機中はあまり役に立たない。船乗り場の奥に見える白色・レンガ造りの2階建ての建物は鄭和研究院(Akademi Pengajian Cheng Ho Antarabangsa)だ。紺色の装飾アーチが立ち並んでいる正面が目を引く。料金と運航時間は季節ごとに変わるので、現地のチケット窓口で確認するのが確実だ。

訪問後に整理した実用的なメモ
- 日傘・傘は必須。 折り畳み式で十分だ。午後のにわか雨対策も兼ねる。
- 経路は短く、日よけを中心に。 橋→オランダ広場→時計塔→川辺の壁画路地まで全て徒歩5~10分以内だ。問題は距離ではなく日中の暑さなので、30分歩いて30分屋内に入るという形で分けるのが良い。
- 川の水は潮流によって全く異なる。 水が多い時と引いた時で風景が全く違うので、写真が目的なら満潮の時間帯を狙う価値がある。
- 水辺付近の野生動物に注意。 トカゲのほかにも川辺には鳥と猫が多い。食べ物を持って欄干に寄りかからないこと。
- 料金情報は現地確認をお勧めする。 クルーズ・トライショー・博物館の入場料は変動が頻繁なので、ここに書いておくとかえって間違った情報になる。
帰りの道で再び橋に立った。水は相変わらず濁っており、川の両側の商店街には照明が一つ二つと灯っていた。ユネスコ世界遺産というタイトルより記憶に残ったのは、泥地の臭い、頭頂部を打つ日中の暑さ、そしてその下でピンク色の毛のような服を着て立っていた人だった。次に来たら満潮の時間に合わせてこの場所に立つつもりだ。
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