東京代々木の豚珍館、ご飯茶碗からして気が圧倒される豚カツ店

新宿の南から代々木方面へ向かって歩いて降りていくと、大通りから一ブロック奥へ入り込んだ路地が現れる。東京渋谷区代々木にある豚珍館はその路地の入り口、古びた建物の1階にある。看板も大きくはなく、外国語の案内もない。初めて来た時は地図を見ながらも二度通り過ぎてしまった。結局私を立ち止まらせたのは、壁に貼られた白いネオン看板と、その下に掛かった豚の絵が描かれた暖簾…

東京 · Tonchikan

新宿の南から代々木方面へ向かって歩いて降りていくと、大通りから一ブロック奥へ入り込んだ路地が現れる。東京渋谷区代々木にある豚珍館はその路地の入り口、古びた建物の1階にある。看板も大きくはなく、外国語の案内もない。初めて来た時は地図を見ながらも二度通り過ぎてしまった。結局私を立ち止まらせたのは、壁に貼られた白いネオン看板と、その下に掛かった豚の絵が描かれた暖簾だった。

白いネオン看板に『豚珍館』の漢字が大きく書かれ、その下に豚の絵が入った白い暖簾が掛かっている店の入り口。左側には六角形の提灯がぶら下がっている
看板の豚珍館、暖簾の豚一匹。左の六角形の提灯には『とんかつの店』と書かれている。

暖簾の中から白い調理着を着た人たちが動いているのが見え、店の前の狭いスペースには客の荷物が積み重ねられていた。席がないということだ。待ちは階段の踊り場に立ったままなのだが、夏は揚げ油の熱がそのまま上がってくるので、シャツがすぐに湿ってくる。

ドアに貼られたメニュー板がこの店の説明書だ

待っている間にやることは一つ。正面のドアに貼られたメニュー写真板を読むことだ。二十枚以上のコーティングされた写真が貼られており、隣に縦書きの漢字で価格が書かれている。日本語が読めなくても、写真を指差すと注文ができる。

店のドア上部に貼られた営業時間案内、ドアにコーティングして貼付されたメニュー写真板。写真板の上に『No Plastic Cards』と手書きした青い花型メモが貼られている
ドア上の営業時間案内。その下の青い花型メモには「No Plastic Cards, Sorry for inconvenience」。

この写真で二つ必ず確認すべきことがある。上の白い紙の営業時間と、メニュー板の中央に貼られた青い花型の手書きメモだ。私が撮った時点での案内には以下のように書かれていた。

午後3時から5時までのブレイクタイムがあるというのが重要だ。東京で午後遅くに食事時間を逃してさまよった人なら分かるだろう。この二時間にここに来たら、閉まったドアだけが見える。そして青いメモ、カードは受け付けない。現金のみ。コンビニのATMで引き出してくるのが心が楽だ。ただし、これは私が訪問した時点での案内であり、営業時間や支払い条件は変わる可能性があるので、現地確認をお勧めする。

ドア全体を埋めたメニュー写真板。二十枚以上の定食写真それぞれに縦書きの漢字名と価格が付いている
メニュー板全体。写真に写っているすべての定食はご飯・汁・漬物がセットで構成されている。

写真に写っている価格表を読むと、串カツ850円、生姜焼き930円、チキンカツ930円、豚カツ980円、ハムカツ700円、イカフライ630円といった程度だ。下の段に降りるとヒレカツ1,350円、ミックスフライ1,250円、ロースカツ1,150円といった具合に値段が上がっていく。東京の中心部の物価を考えると、この構成にこの価格は安い。ただし、これは私が撮った時点での表示価格で、今は上がっている可能性が大きい。壁のメニュー板の数字を直接確認してから座る方がいい。

ご飯茶碗を見て初めて笑った

席に座ると、すぐに分かる。この店は量で有名な店だということが。定食が出るのだが、ご飯茶碗がみそ汁の椀と同じくらいで、ご飯はその上に盛り上がっている。二人で座ったら、そんなのが二つ置かれた。

木製テーブルの上に盛り上がった白い米ご飯二杯と、厚切りにされた揚げ物がキャベツの千切り・紫キャベツ・トマトと一緒に盛られた灰色のお皿、赤い塗装のみそ汁
ご飯二杯に揚げ物一皿。これが一人分ではなく、二人で分けるお盆のように見える。

揚げ衣の色が濃い。最近流行の薄い金色の低温揚げではなく、茶色がしっかり出ている昔ながらのスタイルだ。お皿にはキャベツの千切りが山盛りで、紫キャベツが色合いを出している。パセリ一本、トマト一切れ、きゅうり二切れ。構成が40年前の写真からそのまま移してきたようだ。

灰色のお皿の上に厚切りにされた茶色い豚カツと盛り上がったキャベツの千切り、後ろ側の調味料の置き台に赤い七味唐辛子の瓶が置かれている
揚げ衣が厚く、色が濃い。後ろの赤い粉は七味。

箸で一切れつかむと重みが感じられる。揚げ衣が肉に しっかり付いており、噛むと、ザクザクという音というより、ポリポリに近い音がする。油を含んだ衣なので軽くはない。これは好みが分かれる部分だ。薄くてサクサクした揚げ物を期待して来ると、「これちょっと重いな」と思うかもしれない。

箸でつかみ上げた豚カツの切り口。濃い茶色の揚げ衣の中に白い肉の繊維が見える
断面。揚げ衣の厚さがかなりのものだ。

みそ汁がよかった。赤い塗装の椀に盛られて出てくるのだが、豚肉の切れ端が入っているので、汁がズッシリしている。揚げ物を何切れか食べて口の中がパサつくと、このみそ汁をひと口飲み込むと、また箸が進む。漬物はほんの一箸分の赤い漬物がとても少なく出される。

盛り上がった白い米ご飯の大きな茶碗とその奥赤い塗装の椀に盛られた豚肉が入ったみそ汁、右側に赤い漬物の一皿
ご飯一杯の実際のサイズ。後ろには豚肉が入ったみそ汁。

正直に言うと、私はご飯を全部平らげることができなかった。揚げ物を全部食べてもご飯が3分の1ほど残った。隣の会社員は全部食べていた。ご飯の量が調節できるかは私は確認できなかったので、自信がなければ席に座る時に聞いてみるといい。

箸で持った揚げ物の切り口に白い肉とソースが付いており、後ろに調味料の瓶群と木製の蓋のご飯桶、みそ汁の椀が見える
ソースをつけた一切れ。後ろの木製の蓋はテーブルに置かれたご飯桶だ。

見つけ方と席確保

最寄り駅はJR代々木駅だ。駅を出て数分歩けばいい距離なので、新宿から一駅移動するか、新宿南口から真っ直ぐ歩いて降りてきてもいい。問題は最後の100メートルだ。路地の奥にあり、看板が道路側に大きく飛び出ていないので、地図の座標をオンにして、建物の1階の入り口を探らなくてはならない。暖簾の豚の絵が目に入ったら、正しく着いたということだ。

昼食時は近所の会社員でいっぱいだ。午前11時30分前に入るか、1時半過ぎに行くのがいい。二度目に行った時は夜の営業が始まる5時に合わせて行ったら、白いカウンター席をすぐに確保できた。カウンターは照明が明るいので、お皿の色がはるかに良く見える。

明るい白色のカウンターの上に置かれたロースカツのお皿。大きな豚カツ一枚が切られて盛られており、横にキャベツの千切り、ソースの小皿、赤い漬物、豚珍館ロゴが印刷された箸の袋がある
二度目の訪問、カウンター席。箸の袋にも豚珍館のロゴが印刷されている。

この日注文したのは短ロース側だった。お皿の直径をほぼ埋めるサイズなので、最初は二人分かと思った。一切れ持ってみると、断面が薄いピンク色だ。揚げすぎていないということで、噛むと肉汁がしっかり出ている。揚げ衣の粗い味よりも肉の味が前に出ている。

箸でつかみ上げたロースカツの断面。揚げ衣の内側の肉が薄いピンク色を帯び、繊維が詰まっている
断面が薄いピンク。この一切れのために、また来た。

初めて来る人が知っていると良いこと

東京で豚カツを食べるなら、はるかに洗練された店が多くある。黒豚ブランドを打ち出し、低温できれいに揚げて薄いピンクの断面を自慢する店たち。豚珍館はそちら側ではない。揚げ衣は厚く、色は濃く、ご飯は無駄に多い。だが全部食べて階段を下りてくると、なぜか気分がよかった。お腹が満腹という感覚がこんなにシンプルに満足だったのは、久しぶりだった。

次に読む

  • 秋葉原中央通りから神田川まで、何度も歩き直した東京電気街の記録

    東京秋葉原は一度来ただけではすべてを見たとは言い難い町だ。私は季節を変えて何度も訪れたが、来るたびに看板が変わり、陳列棚の価格表が変わっていた。JR秋葉原駅電気街口を出ると、最初に目に入ってくるのはヨドバシカメラマルチメディア Akiba の通路だ。初めて来た時、この看板で方向を定めた。

    東京 · 秋葉原
  • 東京の西銀座チャンスセンターで年末ジャンボ宝くじ300円1枚買ってみた

    東京の新橋駅日比谷口を出て、高架道路の方へ3分ほど歩くと、突然人の列が歩道に沿って並んでいるエリアが現れる。西銀座チャンスセンターだ。銀座という名前がついているが、実は新橋と有楽町の間、東京高速道路の下の商業施設1階のコーナーに位置する、とても小さな宝くじ販売店である。私はこの前を何度も通り過ぎてきた。何か有名なラーメン店かと思っていた。その日はちょうど年末…

    東京 · 西銀座チャンスセンター
  • 上野アメ横、日が暮れてからが本当だ — 御徒町ゲートから上野駅まで歩いた夜

    東京に来るたびに上野アメ横(アメ横)は日程に入れなくても、結局足が向いてしまう。今回は御徒町側から入って上野駅側に向かって歩き回ってきた。昼間に来て「思ったより大したことないな」と帰ってしまう人が周りにかなりいるのだが、この街は午後5時を過ぎて看板に明かりが入り始めるころから表情が変わる。JR線路の下のアーチとその横の路地が一気に灯りはじめると、市場というよ…

    東京 · アメ横市場